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南極の図書館

ペンギンが寝ていた…。

書評 生命保険のカラクリ

こちらの本。なお、本書の作者による、各書評についての意見がこちらにある。
「生命保険のカラクリ」の評判: 生命保険 立ち上げ日誌

今回の「生命保険のカラクリ」は2006年〜2009年に学んできたこと(の一部)を本にしたもので、自分のなかでは「留学記」の続編、とも言えるくらい力を入れて書いたものです。

とある通り、かなり内容がある本だ。


私はこちら読ませていただき、そのため本書に出会えた。
404 Blog Not Found:愛と利益と - 書評 - 生命保険のカラクリ


なお、私は保険に関わった仕事をしたことがあり、セミナーも受けさせていただいたので保険について全くの素人というわけではない。
そのため本書の内容も「大体知っている」ものだったが、記載されたデータ数は当時のセミナーに勝るとも劣らないほど素晴らしかった。
本エントリではそのうちいくつかを提示し、自分の備忘としつつ本の紹介とさせていただく。
保険商品に対する日本の状況は異常なので(セミナーでも本書でも言われた)、是非手に取ってほしい。


ちなみに、私は保険には入ってない。

まず何よりも、知ってほしいこと。

あまりに大事なことなので順番をぶっちぎって、最初に「公的保障」について。
本書でも中盤あたりに記載があるが、国民年金に加入していれば以下の保障が受けられる。

「高額療養費制度」
ガン等でで300万かかっても10万円程度の支払いしかしなくてよいこと。
(なお、この制度の認知度は20-30歳で2割。40-50歳で3割と低い)

「遺族年金」
死亡に関しても、国民年金に入っていれば、遺族に年間80~150万程度入るということ。

これらを知らずに「急な病気で300万円も払えないでしょう?」「死んだら奥さんはどうするんです?」などの営業トークを受けると揺れてしまうため、気をつけて欲しい。


ではここから仕切り直して。
前提として、本書は保険会社の社長が書いたものであり「保険に入れたい人」であることを意識しつつ、続きをどうぞ。

本書の大量のデータと展開の流れ

以下すべて「日本の保険の情報」である。
これを、どれだけ知っている人がいるのか。


・とある保険に30歳で入ると月12000円、45歳では23000円、55歳で48000円、35年の合計では800万円払うことになる。また別の会社では1600万円払い込む。
・30歳で3000万円の死亡保険に入り10年間で74万円払うとして、その中で「保険」の部分は28万円、他は手数料となっている。
詳しく言うと、日本の掛け捨ての死亡保険では平均35-62%が経費+利益となっている。
・少し話は変わるが、ギャンブルでの胴元の取り分は、パチンコ2割、競馬2.5割、宝くじ5割と言われる。保険が上記の割合ならば、それ以上取られる場合もある、ということだ。
・他国との比較として、新契約の利益率は、2007年の資料より、日本8.9%、ドイツ3%、アメリカ2.3%、フランス1.7%、イギリス1%。


以上のようなデータを示しながら、
P50からは「罪深い転換セールス」として情報格差で顧客の資産をつぶしていた事例を。
P59からは「払われなかった保険ー不払い問題」として、2001年から5年で964億円となった不払い問題について言及。更にこの件はP136以降で補足されている。


※ここで、本には記載されていないが、私がセミナーで聞いた「セイホの悪い事例」としてひとつ紹介する。(記憶からなので細かい違いはあるかもしれないが。)

医療保険で、一日入院で5000円という保険を出した保険会社があった。
保険をもらうには診断書が要る。
保険会社はもちろん知っているのだが、証明書の発行にはおおよそ3000〜5000円必要であり、それは顧客には知らせていない。
もちろん、イザとなったときに申請する顧客は極少数であり、結果的にはボロ儲けになる。

また作者は、保険とは「スパゲッティプログラム」のような「ややこしい商品」と言っている。入る側も意味がわからなくて当然なものだと。
そこから、「保険の要素」について説明が始まる。
一言でいうとすべて「保障」か「貯蓄」に分けられるということ。
(これは「保険の中の人」もセミナーで教わる。)

第三章「儲けのカラクリ」

第三章からは商売的な舞台裏の話となる。
「完全生命表」というものが厚生労働省から出ていること(もちろん誰でも見れる)と、保険会社が使う「標準生命表」について。
これらは要するに「何歳で何割が死ぬのか」と、その上で保険会社が引き受ける倍率はいくつか、というものである。
ここから、何をどう利益にしているのかを説明する。

第四章「かしこい生保の選び方」

昨今のサブプライムで世界最大手のAIGが18兆円の支援を受け、08年10月には大和生命が破綻。09年からは変額の新規受付を辞める会社が増える。
ということから始まり、規制緩和の歴史を詳細に綴る。
そして、当の本人が08年11月に行った、付加保険料(要するに手数料)の全面開示と、業界の反応(主に怨嗟の声)についても記載あり。


更にはP189でこう言ってしまう。

大きな情報格差があることを前提としてきた既存のビジネスモデルでは、この先立ち行かないだろう。

まさにその通り。
情報格差で儲ける職種なハズがない。おかしいのだ。

最後に

「保険にかしこく入るための七か条」と「あとがき」に続く。詳細は本書で。

まとめ

感想としては、当時受けたセミナーを思い出すような本だった。
つまり「保険を売る側が知っているべき知識」が大量にあった。
保険業界の過去の過ちと言っていいだろう顧客軽視の風潮と情報格差を利用していたこと。
私のときも「やってはいけない」と言われた。


セイホの歴史から、実際に入るときの注意点まで、主観ももちろんあるがデータで教えてくれる一冊。
私の当時のセミナー代を考えると(個人で払ったわけではないが、講師を呼ぶとそれなりの料金がかかる)、この値段は安すぎるだろう。


「人生の中で家の次に大きい買い物なのに買う時によくわかっていない」保険について、この機会にぜひ学んでいただきたい。


次回は、サブプライムから続いている外資系の撤退について、また今回書ききれなかった「公的保証」の詳細について書く予定だ。