南極の図書館

ペンギンが寝ていた…。

「疑似同期」という概念。「ニコニコ動画が未来を作る ドワンゴ物語」を読んで

友人がニコニコ動画にハマっているので、話の種にでもなるかな、と軽い気持ちで買ってみた。
ところが読んでみたら想像した内容とは全く違い、しかしこれが面白い面白い。

ニコニコ動画以前

本書の内容は、ドワンゴ会長である川上さんとその身近にいるギークの歴史。
また、ゲーム、インターネットに対する思想についてである。


細かい内容は目次の通り、Bio_100%時代から始まり、DWANGOの立ち上げ、iモード時代のDWANGOにページが割かれている。
始まりは「この音楽は、PC−9801のビープ音だけで作られていた」という時代から。


その後、So-netから受託されたゲームを開発し「もっとこんな風に運営すればおもしろいのに」「やっぱり開発と運営はいったいじゃなきゃダメだ」と学び、
iモードが出たときには「常時接続で情報をプッシュする」というパソコンには不可能だった機能に感動する。
曰く「つまりiモードは世界で初めての常時接続インターネット端末だったのだ。」


その後、ドコモへ企画書を持っていったときの、夏野さんと清水さんの会話も面白い。
夏野「それでいくらほしいの?」
清水「い、いっせんまんえんぐらいですかね・・・・・・」
夏野「そんなのすぐ稼げるよ!ゲームをあなたたちが運営すればいいんだよ!」


それから作っていったもの「釣りバカ気分」「いろメロミックス」「サムライロマネスク」「Gacktの着ボイス」など。
細かいところには脚色もあるのだろうが、読んでいるだけで興奮する。

ニコニコ動画

P228から、ようやくニコニコ動画につながる話になる。
ここまで読むと「なるほど、それまでの歴史を知らないと、サービスの思想を理解するのは難しいな」と感じる。
まずは「同期と非同期の狭間に」で始まる。


「非同期のサービスってもっと進化してもいいんじゃないの?」

「ネットでじゃあバーチャルなライブをやればいいんじゃないかな」

「左右に動画とコメントがあると、だんだんコメントはみなくなるような気がするな」


ネットライブの時間軸は、2つある。
コメントが書かれていくリアルの時間帯と、動画の中のバーチャルな時間帯。
リアル時間軸の中では古いコメントでも、バーチャル時間軸の中で新しければ最新として表示される。
これは疑似同期とでも呼ぶべき新しい時間のシステムだ。


最後は川上さんの「なるべく怒られにくい名前にしようよ」という方針の通り、2006年12月12日 ニコニコ動画(仮)としてはじまった。

感想

私は「懐かしむ」ほどWin95以前の話を知らないので、序盤は「へぇ〜」という感じでした。
登場するのは有名な方ばかりなので、誰が読んでも知ってる名前があると思います。
私が個人的に好きなのは清水さんで、現在進行形でいつも面白いことをされています。
UEI/ARC shi3zの日記


本書に登場している天才たちも、ドワンゴという会社も、これだけのことをやってきたから、今があるんだな、と思います。
私はニコニコ動画はあまり使っていませんが、オススメできる一冊です。